2013/06/28

イタリアンブランドの成長戦略

photo from cyclowired



先日、久しぶりにツイキャスをしていた時、「フレームの色変えとかどうよ?」という話になりました。その時に思い出したのが90年代初頭のMG-Bianchiというチーム。

マリオ・チポッリーニが若い時に在籍していたチームなのですが、このチームに供給されていたBianchiは全てデ・ローザ製のフレームだったことはビアンキマニアにはよく知られている事実でもあります。

その時に、「ネオプリ買って、チェレステに塗ったらかっこよくね?」という話をして、盛大に怒られたわけですが(苦笑)、個人的には今のデ・ローザにはそれくらいの失望感しかありません。

例えば、僕の手元にある『ロードバイクライフvol.3 イタリア〜ロードバイクの聖地を訪ねて〜』という本にはこのように書いてあります。

「自分たちと工房の職人が合わせて作れる年間6000本以外には、手を出さないと決めているし、クオリティーを下げてまでも本数を増やす気などさらさらない。ましてや外部にフレームの制作をまかせるなど。」

「最も重要なのは、塗装以外の一切をこの工場内で行なっているということ。メイド・イン・クザーノなんです。」(3男のクリスティアーノによる言葉)


そして2011年、デ・ローザからR848というバイクがデビューしました。

様々なブログに詳しく書かれているように、このバイクは台湾のX-Pace社のフレームをデ・ローザが独占使用する契約を結び、デ・ローザブランドから発売しているものです。

この辺りの話は以下の記事が面白いと思います。
R848  DE ROSA(デローザ)とXPACEを結ぶ「点と線」

DeRosa R848と中華カーボン

De Rosa ロゴの性能

正直なトコロ、僕が言いたいことはこれらの記事に全て書かれているので、この場では何も言うことはありません。しかし、デ・ローザの一貫性の無さには本当に失望しました。ブランドとしての成長戦略と考えるのであれば、非常に正しいことをやったと思っています。事実、デ・ローザが今後も存続していく為には仕方のない流れだったとまで思っています。

が、今現在デ・ローザのイタリアの工房で作られているバイクはデ・ローザのHPを見る限りチタニオとコルムというモデルの2つしかありません。コルナゴのマスターXライトと並んでクロモリバイクの双璧を構成しているというイメージで語られるネオプリマートはイタリア生産モデルでは無いようです。ネオプリマートはイタリアの工房で生産されていたモデルで、フレームセット30万弱のモデルだったと記憶しています。安くなったことで失うもの…。デ・ローザだけは信じていたのに…という思いが裏切られた感じであまり気分の良いものではありません。

確かに、アバンティというモノコックモデルはミズノで整形されていたとは書いてありますが、デ・ローザのアイデンティティである金属フレームを台湾で作ってしまうのは如何なものかと…。

こういった話は色々な受け止め方をされると思います。しかし、ある程度の一貫性を持ったマーケティング戦略を取ることが長期的に見た時の正解であるのは誰も否定出来ないでしょう。一度落ちたブランドの価値は二度と上がることはありません。あと何年保つかなぁ…というのが僕の率直な感想です。デ・ローザというブランドは残るのかもしれませんが、それは最早デ・ローザとは言えないものでしょう。いや、既にそうなっているのかもしれませんね。

サイクルベース名無しに投稿されているR848についての記事にこういった記述があります。

「ここで私は、第三の可能性に思い至ったので、それを述べてみたい。それは、
3. 既に半世紀以上の歴史のある「De Rosa」ロゴには、現代科学では説明のつかない超自然的な力がある。すなわち「De Rosa」の純正ロゴをフレームに貼付けてクリアコートをかければ、素材となるカーボンフレームの振動吸収性能・振動減衰特性が「De Rosa」に特徴的なそれに変化する、という不思議なパワーがある。

つまり、「貼るだけでクルマや自転車の性能が向上する」として売られているステッカーのような製品、あれに近い効果が、「De Rosaロゴ」にはあるのである。ベースとなるフレームは、もはや職人が一本一本まじめに制作したチタンフレームや、クロモリフレームである必要はない。素性の良いカーボンフレーム、たとえば「Xpace FM-R848」のような優れたフレームであっても、勿論良い。そこに「De Rosa」ロゴを貼る。すると、そのフレームは、誰がどう乗ってもDe Rosaのバイクでしか味わえないはずの乗り味を提供するようになる。

「スーパーブランド」とは、まさにこうした、神秘的とも呪術的とも呼べるような、人知を超えた不思議パワーを持ったもののことを、言うのである。自転車の世界で、そんなすごいブランドは、たぶんDe Rosaだけなのかもしれない。」


これは何もR848に限ったことでは無く、チタニオとコルム以外の全てのバイクに共通して言えるのではないでしょうか?それこそイタリアで作られていたネオプリマートと現在のネオプリマートのジオメトリは全く同一です。が、ウーゴ・デローザが言っていた言葉を考えると非常に複雑な気持ちになります。その本質は同じなのでしょうか?いや、僕は全く違ったものだと思っています。

それでは他のブランドはどうなのか?という話はも又非常に難しい話です。

コルナゴ然り、ピナレロ然り、ビアンキ然り、舶来物として高い評価を得ていたブランドの製品で、イタリアで今も生産されているモデルは殆ど無いでしょう。

コルナゴのトップグレードであるC59がかろうじてイタリアで接着されている…というくらいでしょうか?GIANT製のパイプを使用しているなど色々な事が言われていますが、C59に関してはイタリアで生産/塗装を行なっていると公式ページに書かれていますね。こちらのページによればマスターもイタリア生産だということです。M10などはGIANT製だと公言されてますからねw。コルナゴの上手さは、ジャイアントがコルナゴの大株主であるということも影響しているように思います。

ピナレロは…うん…まぁ…ほら。シナレロって単語があるくらいですからねw。しかし、かなり早い段階から台湾に生産拠点を移したことを公言しているばかりで無く、2013年モデルのドグマの思い切った値下げは個人的には潔いと思っています。2000年代前半という、かなり早い段階に「イタリアメイド」という単語を使わなくなったと記憶しています。個人的にはひたすら拡大路線を突き進んでいるという一貫性がハッキリと見えるので好感を持っているブランドです。更に、製品にONDAや左右非対称といった独自の設計思想を盛り込んでいる(それがイタリアンデザインなのか、台湾デザインなのかは置いておいて)のは素晴らしいことでしょう。

ビアンキは2010年〜2011年辺りに一度死んで、そこから又復活しているブランドなので生暖かい目で見るしか無いと思っています。今は完全に迷走期じゃないでしょうか?迷走期だからこそ2014年の新モデル乱発が出来るのですが(苦笑)

とかグダグダと書いていますが、最終的に僕が言いたいことは一つです。


ブランドを愛するということは良いトコロも悪いトコロも愛していくことだと思うのです。それが真のファンではないでしょうか?ブランドの欠点に対して目をつぶるのでは無く、その欠点に対する明確な意見を持った上で全てをひっくるめて愛していく。そういうファンが長期的にブランドを支えて行く。と思っています。新しい路線を切り開くのは大切なことですが、時には立ち止まって過去を振り返る事って凄く重要なことでは無いでしょうか?過去を振り返る事が出来るのが昔からあるブランドの強みなのですから。だからこそ一貫性が欲しい。多少迷走したとしても、矛盾したことはやって欲しく無いのです。

1 件のコメント:

  1. リンクありがとうございます。
    De rosaの記事をまた書きましたのでお時間ありましたら、御覧ください。

    De rosa Super King 似のTop-Fire FM-869の謎

    http://china-carbon.seesaa.net/article/368090607.html

    返信削除