前回、要素が多すぎると伝えたいことが伝わらないという話を書きました。
前回の話で伝えたかったことは
・良い写真を見ること(インプットの重要性)
・伝えたい主題を決め、それのみを写すこと(ポイントを絞った簡潔なコミュニケーションを心がけること)
の、2点でした。
この2点を更に簡潔にまとめると
・自転車写真のプロの写真をしっかり見ろ
・意外と全部同じ構図で、選手しか写っていない写真ばかりだぞ
ということになります。
スポーツ写真はどうしても一瞬の切り取りになり、選手そのものが猛烈に変動する点Pになってしまうため、選手1~2人に主題を絞らないと伝えたいことが霧散してしまうということです。
今回は主題を引き立たせる為に要素を足し、視る人の視線を誘導していくことについて書いていこうと思います。
上の写真、どこか違和感を感じないでしょうか?この写真は僕が好きなモノを入れ込み過ぎた為失敗したという例で今回掲載しています。
この写真を丁寧に解説すると、
撮影地:ストーンヘンジ
撮りたかったもの:ディフェンダー
写し込みたかったもの:イギリスの広大な田園風景とその奥にあるストーンヘンジと道
と、ある程度要素を絞ったものの、上手くいっていないことがわかります。
僕個人の分析ですが
・ディフェンダー:僕が好きな車<機械>
・直線道路:純粋に面白いと思った<人工>
・ストーンヘンジ:感動した<ここでは抽象物>
・広大な田園風景:背景<人工と自然の間>
と、あまりに要素のジャンルや規模がチグハグでバランスが取れないことがわかります。
また、構図が絶望的に悪い。
撮る時は車ばっかり見てましたからね。車はかっこよく写ってるから良いよね。というのは自己満足であって、視る側としてはどこを見れば良いかわからないわけです。
もし、この写真を成立させたいのであれば、車が道路の真ん中に止まっているべきだったと言えるでしょう。つまり、選んだ主題そのものが悪かったわけです。
とはいえ、撮影者と親しい思考回路(これを教養と言うはずです)を持っている人には受ける写真だと思います。想定している層にリーチしたら評価されるタイプの写真です。
でも何か変ですよね。
この1枚は集中線が多すぎる+途切れてしまっているというのが大きな問題だと思います。
こうするとわかりますね。背景がごちゃごちゃしすぎなわけです。この写真、iPadなどで視ると割と違和感は無いのですが、パソコンで見ると微妙という不思議な写真です。
シンプルに暗い領域が多すぎます。
では背景をもうちょっと単純化させてみましょう。広角レンズを使って寄ることでわざと被写界深度を薄く設定しています。
こっちのほうが断然良いですね。でも、未だ違和感があります。
人間の目は一番最初に最も明るい/鮮やかな部分に吸い寄せられ、その次に最も暗い部分を見てしまうと僕は考えています。この写真だと顔→右下の空間に意識が行くはずです。視線誘導しようと思っているのに、右手前によくわからない暗い領域があってそっちに意識が行ってしまうわけです。
後ろのボケを使って見せたい所を明るくする手法です。
この写真はTVで使って頂いた1枚ですが、わざとクリスマス感を出す為に背景のイルミネーションを残しています。情報を足すか引くかというのは写真の用途によるよねという話です。
こういうのも一緒です。
ちなみに、こういうパツパツの写真(殆ど背景が無い写真)というのはある意味日本の報道写真であり、広告写真ではまた微妙に違うのも写真の難しさです。
例えば、文字を目立たせたい時などは意図的に被写体とは別の場所に明るい部分を作るということも出来ます。
0 件のコメント:
コメントを投稿