2012/03/07

【緊急執筆】ロードレーサーに油圧ディスクブレーキ【タイプミスあるかも】


コルナゴがカーボンフレームにDi2+油圧ディスクという革新的なバイクを発表したようで…。

色々な意見が飛び交っていますが、雑感を纏めてみました。


まず、現在自転車に採用されているブレーキシステムは大きく分けると、「ハブ位置にあるブレーキ」「リムに直接作用するブレーキ」「ディスクブレーキ」の3タイプに分けられます。いずれのタイプのブレーキにもメリットデメリットがあるわけで、"どのメリットを重視"し、"どのデメリットを受け入れる"かという選択の結果が現在の形式に落ち着いているわけです。

個人的には、ハブ位置にあるブレーキについては詳しくないのですが、自動車がドラムブレーキからディスクブレーキへ移行するときに言われていたことが"熱問題の解決"だったのと、ブレーキを多用する競技用自転車/バイクにはハブ位置のブレーキは採用されていないことから、今回は無視して議論を進めていこうと思います。一応、当時は"ドラムブレーキのほうが強力だがフェードしやすい"と言われていたように記憶しています。

まず、ディスクブレーキのメリットは何でしょう?

一般にMTBで言われているメリットは
・スポークが撓む為、ロックしにくい(コントローラブル)
・マッドコンディションでも一定の効きが確保出来る
・ブレーキの引きが軽い
・ホイールが振れても走れる

という内容でしょうか?

ロードレーサーに採用した場合、全てメリットになり得ます。更に、ロードレーサーのカーボンリムで長い間議論されていた熱問題が解決出来る事も合わさり、明らかにメリットがあると言えます。

しかし、メリットばかりを見て喜ぶのでは無く、デメリットも直視しなければなりません。

まず、ワイヤー式のブレーキとはメンテナンス方法が決定的に変わってきます。これは慣れで解決出来るでしょうが、最初のハードルとしてはかなり高いでしょう。

そして、MTBでディスクブレーキを使用している自転車を持っている人は解ると思いますが、ディスクブレーキを採用するとホイールをオチョコに組む必要が出てきます。既にリアホイールがオチョコになっているので問題は無さそうですが、左右非対称リムが登場した際のエアロダイナミクス(空力)がどうなるか…という興味深い問題も出てきます。

同時に、フレームとフォークにより高い捻れ剛性が要求されます。ディスクブレーキを採用するメーカーは殆どの部分の強度計算を再度行う必要があるでしょう。これはコスト増に繋がります。

ここで、「あれ?ディスクブレーキにすると、キャリパーブレーキと比較するとストッピングパワーが上がるんでないの?」と言われる人が居るかもしれません。

しかし、それは理論上はあり得ません。

"テコの原理"を考えて頂ければ解りますが、同じ力をリムの外周にかけた場合とリム内側にかけた場合では、明らかにリム外周にかけた場合のほうが増強されます。これは、ハブの重量が走りに対して影響しない理論と共通する内容ですね。

実際、ブレーキの絶対的な効きを求めるトライアル競技ではつい最近までウレタンシューを利用したリムブレーキが大きなシェアを持っていました。技術力の向上によりディスクブレーキでも十分なストッピングパワーを得られるようになってから、耐フェード性やランニングコストの問題も解決され、ディスクブレーキが普及してきましたが、価格やメンテナンス性の問題から今もリムブレーキを愛用している人達が居ます。

最近のロードのブレーキ性能に関しては、タイヤのグリップ力を考えると既に飽和していると言っても過言では無いと思います。その証拠が79/67/57系のレバー比が変わったブレーキシステムであり、カンパのリアだけシングルピポットというシステムに現れていると言えます。

つまり、リムブレーキで理論上発生させることが出来るストッピングパワーは既に不要だと言えます。この辺りにディスクブレーキ導入のカラクリもありそうです。既に不要なほどストッピングパワーが増してしまったリムブレーキ、十分な性能が確保出来るディスクブレーキ。カーボンリムの熱問題。これらを複合的に考えると、やはりディスクブレーキには大きなメリットがあるのでしょう。

というか、UCIの6.8kgルールがある為、重量増になってしまっても性能が確保出来るシステムがどんどん導入されると考えられます。

そのうち、ABSも導入されるかもしれませんね。自転車の重量を考えると明らかに不要ですが、一般ユーザー向けには歓迎されるシステムかもしれません。欧州ではバイクにABS装着が義務化されたはずですが、自転車も同じ二輪車、フロントだけでもABSがあれば転倒するリスクは下がります。レース現場で採用されるかどうかは解りませんが、どんどんデコレーションケーキ化することは否めませんねw。

この辺りの話は80年代の自動車メーカーの抱えるジレンマと共通しているように感じます。不要な過剰装備を喜ぶユーザー、設計段階では軽くシンプルに作りたいメーカー…。新谷かおるさんの"ガッデム"という漫画に詳しく描いてあるので、興味のある方は一度目を通してみてください。

最後に僕の話。

油圧ディスクはシステムとしては面白いので歓迎しますし、自分も将来的には導入してみたいと思っていますが、金銭的な事を考えると不要かな?と。雨天時は乗らない為、MTBもディスクブレーキじゃなくても良いかな?と思っている人間なので、ロードはいいや…というのが率直な意見です。

そして、必ずロードレーサーに油圧ディスクは定着すると思っています。過去のMTBの流れを見ているとそんな気がしますw

【追記】
書き忘れていましたが、油圧ディスク化には電動コンポーネントが必須です。STIやエルゴにラチェット式のシフトシステムと油圧のリザーバータンクを入れたら巨大になってしまいます。

あくまでも、電動技術が進んだから可能なシステムですね。

次へ続く

2 件のコメント:

  1. Yasuo Nakano2012/12/11 9:23:00

    いい内容、勉強になります。油圧と電動コンポの関連に納得です。’14にはシマノがご指摘のコンポを出すとのことで楽しみです。とりあえず僕は入れませんが(笑)。ロードの繊細な乗り味という点では、ディスク、どうでしょうか?コルナゴにちょっと試乗したいです。

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    1. Nakanoさんどうもです。
      最近、シマノが完全に予想通りの進化方向に行っており、「やっぱそうくるよな~」と仲間内で盛り上がっています。今後は如何にコストダウンしていくかが問題になるでしょうが、多分ユーザーへの還元はされないでしょうねぇ…。
      ディスクがロードの繊細さをスポイルすることは無いと言って良いと思います。あくまでもMTBの話ですが、リムで制動するVブレーキよりも油圧ディスクブレーキのほうがより繊細にコントロールすることが出来ます。最近、ディスクブレーキ仕様のシクロクロスバイクに乗る機会があったのですが、個人的にはリムブレーキよりもブレーキコントロールが楽だと感じました。
      コルナゴの実車、サイクルモードと秋の鈴鹿エンデューロで見てきました。ちょっと触った感じだと予想の範疇であり、「(良い意味で)まぁこうなるよな…」という感じです。とりあえずコルナゴが使っているシステムはフォーミュラ社のものなので、SRAMとシマノから純正のコントロールレバーが出るまでは是非を問うことは出来なさそうですね。各社の味付けの違いが輪界を賑わすことになりそうですw。

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