先日の記事、コメントの公開を皮切りに色々な所で話題になったようで…
色々な意見がありますが、自分の考えを纏めてみます。
個人的なスタンスとして、特定のモノ/会社を批判する気は無く、それゆえ今回の記事は文章が冗長で読みづらいかもしれません。
再度、チタンボルトについて纏めてみると…
・チタンボルトは鉄系のボルトに比べて軽量なのは明白
・チタンが最初から表面に酸化皮膜を作る為、チタンの反応性は非常に低い。つまり錆びにくい。
・チタンボルトで剛性が上がるかは不明。
で、Twitterで問題になったのですが、先日の記事のコメントを引用させて頂くと
<引用開始>
単純にクロムモリブデン鋼のSCM435と引張強度は似たようなもんのTi-6Al-4Vですが、ヤング率は半分の114Gpaしかありません。
これは単純に言って剛性は低いんですが、剛性が低いくせに引張強度は強い…①という『高強度低剛性』というある意味パラドクスな特性を持っています。
ものすごく乱暴な例えをしますと。
SCM435=割り箸
64合金=ゴム棒
この割り箸とゴム棒を同じ応力で曲げた際に割り箸って『ビリビリビリ』って振動しながら曲がって行きますよね。しかしゴム棒は折れる=切れる寸前まではそのような振動は起きません。
さて、その折れる寸前のものの力を解放した時に割り箸とゴム棒はどうなっているでしょうか?
割り箸は曲がったまんまでゴム棒は戻りますね。
更に曲げの力が掛かった時に戻ろうとする力はどうでしょう?
剛性が低い。
しかし引張強度はある。
だからこそ締め込んだ時に戻ろうとする力が多く発生し、
締結力は安定しやすくなりますね。…②
結果としてどういう状態が生まれるかというと
『組み込んだ部材の剛性が上がる』
と、いう結果が多く生まれますね。
この辺はあとはTAB6400のボルトを体感して頂くのが早いかと思われます。
<引用以上>
①…剛性が低いくせに引張強度は強い
これは理解出来ます。
②…だからこそ締め込んだ時に戻ろうとする力が多く発生し、
締結力は安定しやすくなりますね。結果として(中略)剛性が上がる。
ここは断言は出来ないと思っています。
割り箸とゴムに関しての喩え話は繊維の寄せ集めで作られたモノと単一のモノを比較しているため、意味がよく理解出来ないのですが、それを無視すればこの②がよく僕には理解出来ません。
基本的に、剛性はヤング率に左右されます。これは大学で使用した力学系の教科書を読みなおしてもそう書いてあります。(これは某人がTweetしています。)
で、この話がヤング率は低いけど剛性は上がる…という論に転換するのは解りません。これは構造力学の教科書に書いてありません(;´Д`)
一応、これでも元々は工学部で土木工学を学んでいたので、この辺りは一通りは勉強していますが、どうやらどこかで雑誌の記事を読んだ時にそう記憶していたようです。"チタンボルトで剛性が上がる"と学術的に証明されているわけではないようです。
で、実際に英語と日本語、双方で検索してみると、某一社"のみ"が"チタンボルトで剛性が上がる"ことをセールスポイントにしている事が解りました。海外サイトでは全て、チタンボルトには重量と耐腐食性、ドレスアップのメリットしか書かれていません。
もし、"チタンボルトで剛性が上がる"のが本当に実験結果を用いて説明出来るのであれば、これは新発見になるのではないか?とちょっとwktkしたのですが、理系の人間としては少々疑わざるをえません。
ベータチタニウムの人のTwitterアカウントで積極的に色々な話を呟かれているのですが、最終的に「Tiは少ないトルクでも緩みにくい」という事のようです。
まぁ、色々な側面から見る事が出来ると思いますが、個人的には素材が付与する性能というよりも、加工精度が高い為ネジとネジ山の隙間が少なくなり、その結果微小な遊びが無くなり、結果的に剛性が向上しているような感覚が得られるのではないか…と考えています。
逆に言えば、ベータチタニウム(現在は日本特殊螺旋工業)さんのステンレスボルトを使用すれば更に剛性アップが望めるのでは無いか…。と考えています。
というわけで、チタンボルトを使用すれば剛性が向上する…というのは、フィーリングが向上するとしか現段階では言えないと考えています。
ブログを読んで頂いている人には解って頂いていると思いますが、僕は論理的な考察をしながら自分の理論を自分の自転車に落としこむという楽しみかたをしているので、"フィーリング"とか"何となく"というのはある程度技術的な考察とは分けて考えるべきだと思っています。全ては実験あるのみ。
ベータチタニウムの人のTwitterアカウントで「スプリングバックと軸力の具合はどこまでいっても感覚でしか表せないのは自社の研究力不足と私の説明能力不足だとも痛感します。町の螺旋屋は物知らないと言われるのは悔しいからもっと勉強しますね~」と言っておられるので、今後のR&Dに期待です。
個人的には、軽量かつ錆びにくいというメリットは非常に大きいと考えているので、今後、折を見て導入していく予定です。
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