楕円を取り扱っているブランドは、現在自分が使用している歯数よりも少々小さいギアを選んだほうが良いとしている。
これはどういう事なのだろうか?
自分は、PCD130のクランクを使うことに拘っているため(お金が無くてコンパクトクランクが購入出来ないという噂もw)、真円の53/39からQ-Ringsの52/38とO,SYMETRICの52/42に移行した。
この歯数表示は、「歯の山が何個あるか」という事を示しており、ギアの最大半径は同歯数の真円ギアよりも3~5T分大きく、最小半径は1~4T分小さくなる。
つまり、真円と全く同じ歯数を選んで走行した場合、クランクを一回転させた時に進む距離は同じなのに、力の入力点ではより重いギアを踏む事になる。
もし、最大歯数のギア半径が真円の時と同じギア比で走行すると、必然的にギアの歯数は小さくなり、速度は落ちるため、同じ速度で走るためにはケイデンスを上げる必要がある。
楕円は、「より速く走る」ために重いギアを楽に踏むためのパーツである一方、「ケイデンスを上げて、乳酸を溜まらなくさせる」という疲れを最小限に留めるという側面をも持っている。
しかし、これは本当だろうか?
確かに、下死点と上死点の通過速度が上がり、重いギアが楽に無理なく踏めるため、巡航速度は上昇した。更に、楕円の恩恵を受ける事が出来る領域はケイデンス90以上なので、自分は元々のケイデンスが低いが、アベレージケイデンスが10近く上昇した。
この、「アベレージケイデンスが10近く上昇した。」というのが曲者だと思う。
そもそも一般に、ケイデンスが高いライダーは優れた心肺機能を持っているとされている。そのライダーの筋肉量と心肺機能のバランスが一番良いところが、快適に感じるケイデンスだろう。
楕円を使うことでケイデンスが上昇する事は、このバランスを壊してしまうのでは無いだろうか?
以前の記事で、楕円を導入した直後、70kmくらいで膝が痛み出し、100kmくらいで走れなくなってしまった。と書いたが、自分は心肺機能は高くないが筋肉量が多いため、真円に比べて大きくなっているギアの最大半径に踏み負けてしまったと考えられる。
それ以降、楕円チェーンリングに乗る時間を増やすことで走ることが出来る距離は伸びたが、楕円に変えた直後に走行可能な距離が減ることはレーサーにはデメリットになるだろう。少なくとも、シーズン途中に交換することは絶対に避けたほうが良いと思われる。
トレーニング量が十分でないアマチュアライダーはトレーニング量を増やすか、今までのトレーニング時間のうち、楕円チェーンリングで走行する時間を増やす事で対処することが可能だが、既に限界に近いトレーニング量をこなしているプロにはキツイだろう。プロの楕円チェーンリング使用率が意外と伸びないのは、この辺りにも理由があるかもしれない。というか、あの機材ヲタクのウルリヒが、同じチームにいたヴィノクロフが使用していたO,SYMETRIC(TTの時だけだが)を試さなかったとは考えられないため、彼が採用していないという事は…やっぱりメリットよりもデメリットが目立つのだろう。良かったら、ワルサーのTTバイクにO,SYMETRICを組んだ超弩級の変態バイクでツールを走っていたハズだw。
以前の記事で、「楕円チェーンリングを使う事で正しい力の入力点を覚える事が出来るのではないか」と書いたが、ケイデンスが上昇することで心肺機能が高まると考えられるので、楕円のトレーニング機材としての側面は絶対に無視出来ないだろう。
こういった事を踏まえていくと、やはりメーカーが言うように現在自分が使用している歯数よりも少々小さいギアを選んだほうが良いと考えられる。しかし、歯数が小さいという事は真円の時と同じ速度で走るには、ケイデンスを上げるかギアを重くするかで対処する必要があり、人間が慣れていくしかないだろう。
ここまで来ると、考察は完全に堂々巡りとなってしまい、楕円チェーンリングを採用するか否かは「人と違う機材が使いたいか否か」という辺りに終着点が来そうだw。
それにしても、もしノーマルクランクの53/39を使用しているライダーがO,SYMETRICを「メーカーの言う通りに」導入するならば、別途コンパクトクランクを購入する必要があると考えると、あまりにも金銭的なハードルが高すぎる。これはメーカーの戦略なのだろうか?と勘ぐってしまうw。
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