一般的なロード用ダブルクランクを使用する場合、「アウターは真円でインナーのみ楕円」「アウターは楕円でインナーは真円」という2パターンが可能です。
「アウターは楕円でインナーは真円」というのはヌーボカステ氏が実際に採用していますね。平地を一定のペースで走る事が可能なようにアウターを楕円とし、クライムでポジションを変化させることが出来るようインナーに真円を使用しています。普通に変速してくれますよ。
一方、「アウターは真円でインナーのみ楕円」というのも可能です。装着してみるとこんな感じになって意外と目立ちます。
もちろん、この状態でもキッチリ変速します。
この、インナーとアウターでギアの歪度を変化させるという発想は僕達が初めてでは無く、これを一つの理論として提唱している人達も存在します。
イギリスのHighpathという企業は、オーダーチェーンリングで有名なのですが、楕円チェーンリングのフルオーダーにも対応している珍しい企業です。彼らの楕円チェーンリングはeggringと言い、ボードマンのアワーレコード樹立時に使用されたとかされてないとか…。そんな企業なんですが、彼らは使用目的によってチェーンリングの歪度を変化させていくという理論を提唱しています。
詳しくは、HPを見てもらうと解るのですが、彼らは一貫してアウターの歪度がインナーの歪度より小さくなるのが良いとしています。これは僕やカステ氏の「真円ならば踏むタイミングを変化させても進むため、真円ほどクライム向きだ」という理論とは真っ向から対立しています。彼らに依れば、高速巡航時ほどケイデンスが上がり、上死点と下死点の通過速度が上がるため、アウターの歪度は低くて良いとしています。ケイデンスの下がるクライムほど上死点と下死点の通過速度を人為的に上げてやる必要があり、楕円チェーンリングのほうがクライムに適していると言っています。
彼らはイギリスの自転車連盟?オリンピック協会?と共同で研究を行なっているようで、科学的な裏付けが多分あるのでしょう。彼らの、使用目的によってチェーンリングの歪度を変化させていくという理論の枠組みは非常に共感出来るのですが、僕やカステ氏の「真円ならば踏むタイミングを変化させても進むため、真円ほどクライム向きだ」という理論とは正反対なので、興味深く感じています。僕達が踏むクライムと回すクライム両方を考えているのに対し、彼らは基本的には回すことしか考えていないということでしょう。この辺りの話は自転車のペダリングスキルのお話に繋がってくるので、滅茶苦茶ややこしそうです。
機材のチョイスに関しては絶対的な正解は存在しないと考えています。自転車の性能は実験室の中で相対的に評価することは可能ですが、実験室から一歩外に出ると、あらゆる方向から風が吹き、道の勾配も絶えず変化します。さらに、自転車に乗る人間は十人十色で、一人ずつ違います。その瞬間瞬間では「ベスト」な組み合わせがあるかもしれませんが、結局は「ベター」な選択肢を選ぶしかありません。楕円もそうです。使う人、一人一人がそれぞれの感想を持つはずです。他人の言っている事を鵜呑みにしても仕方がありません。自分で試して初めて解るのです。
楕円についての記事を何本かアップして、TwitterやFacebookで多くの反響がありました。楕円チェーンリングに興味がある方は、ぜひ一度自分で購入して使ってみて下さい。他人の感想はあくまでも他人のものです。他人のパーツを短時間借りても十分な考察は出来ません。一人ずつ、その受け取り方は違うのです。レポートを読んで、理解したように思っても、それは他人の感想文を丸暗記しただけに過ぎません。このブログでは、自分の経験を相対化し、客観的に記すよう努力していますが、限界もあります。自分で購入して使ってみることのメリットは凄く大きいです。
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