2011/12/23

自転車のフレームのお話(その1)

この記事、いったいどういった題でアップするか非常に悩みました。「フレームの剛性」「フレームの耐久性」「フレームの素材」など、記事の中で触れたい事は色々あります。

長くなりそうなので、まずは「フレームの剛性」から書いていきましょう。


一般的にメーカーのカタログや雑誌などを読むと、「何%剛性が向上した」とか「剛性レベルを落とすこと無く何%軽量化出来た」とか、高剛性であることが素晴らしい事であるかのように書かれた記事が目立ちます。

試乗インプレッションを読んでも、高剛性なバイクの試乗記事は「気持よい加速性」や「真のレースバイクとは何かが体感出来るバイク」だとか、非常に良く書いてあることが多いでしょう。

これについて書く前に、今日のライターを取り巻く環境をちょこっと知っておいて貰ったほうが良いかもしれません。

雑誌に投稿しているライターは、メーカーや出版社から原稿料というお金を貰っている以上、絶対に新商品について悪く書く事は出来ません。その記事を読んだら、その商品を買いたくなるようにしなければならないのです。偶に本音が見える事もありますが、そういった所が解るのは僕もライターとしてお金を貰っていた事があるからかもしれません。自動車雑誌では非常に有名な手法なのですが、新商品が出た瞬間から前のモデルをこき下ろして新商品をより優れたように見せようとする手法もあります。

さらに、ライターが商品を使うのは短時間です。一般的な試乗記事は数十km乗っただけで書かれています。酷いライターだと乗ってもいない、見てもいない商品の試乗記事を書いてしまう人も居ます。海外の著名なライターの文章を参考に、仮想で試乗記事をでっち上げてしまうのです。

自転車はパーツの集合体です。その試乗記事はあくまでも、「雑誌に乗った構成で組まれたバイクがそのライターの物差しで見た時どうか」という事であり、その「フレーム」や「ホイール」がどうかという話では無いのです。

以前、心底感心した事があるのですが、国内の某代理店が雑誌用の全ての試乗車にライトウェイトのカーボンホイールを履かせて持って来た事があります。現在でもやっているようで、ライターさん達の中では非常に苦い目で見られているのですが、良いホイールを履いていると、より進みますから、より高評価が与えられやすくなってしまいます。

工学系の人間としては、試乗車は全てコンポーネント、ステム、ハンドル、シートポスト、ホイールなどのパーツも同じ商品で統一し、乗り比べないとそのフレームの良さは解らないだろ?と思いますが、実際問題無理なのが現状です。

こういう業界の体質が解ってくると、意外と雑誌の試乗記事はアテにならず、個人のブログやレビュー投稿サイトのインプレッションが参考になるのが解るのですが、それも自転車はパーツの集合体だということを考えると、本当に参考程度にしかなりません。

じゃあ、お前のインプレッションはどうなんだ?と思われるかもしれませんが、自分も一応ライターです。仕事として受け取った以上、新商品について悪く書く事は出来ません。が、自分のインプレッションでは「どういった使い方なら良いか」という書き方をします。逆に言えば、そこに書かれていない使い方をした場合、普通かそれ以下かということですw。僕の場合、自転車の記事よりもガジェット系の記事のほうがメインで、更に原稿持ち込みというスタイルが多いので、自分が気に入ったものについてしか書かない事が多かったんですけどね。最近は原稿執筆自体殆どしてませんので、お仕事募集中ですw。

話が脱線しましたが、元に戻りましょう。

ライターの試乗記事は短距離の試乗を元に書かれる事が多く、それが試乗記事での高剛性なバイクの高評価に繋がっていることが多いのです。

高剛性なバイクに乗った経験がある人は解るかもしれませんが、そういったバイクは「チョイ乗り」で非常に高評価を受けやすいのです。「チョイ乗り」だと脚もありますし、ガシガシ漕いで乗る事が出来ます。長距離のライドで脚が売り切れ、脚力が落ちた状態を想定していない記事が大半です。

一方、柔らかいバイクは「チョイ乗り」ではあまり高評価を得る事はありません。ガシガシ踏んでも意外とモッサリとしか進まず、もっと反応性が高ければ…と思うことも多いです。

更に、一般的な自転車ライターさん達は豪脚の持ち主であることが多いです。ロードレーサーやマウンテンバイクが競技用自転車である以上、「速い人のインプレッション」がありがたがられる傾向にあります。下手すると僕達の2倍近いパワーのある人のインプレッションは全く参考にならないと言っても過言ではありません。

同時に、ライターさんの身長・体重も見ておくべきです。僕のように162cm/48~55kgくらいの体格の人間が、身長180cm以上・体重70kg以上のライターさんのインプレッションを読んでも全く参考になりません。そもそもフレームのジオメトリが全然違いますし、体重が違えばMTBで言う所のサグが変わってくるので、同じバイクでも全く違う感想を持つでしょう。

こういった事情に加え、「剛性」というファクターは非常に解りやすい(体感しやすい)ため、有り難がられる傾向にあります。「重量と剛性は解りやすい」為に追求されるのです。

高剛性のバイクは短距離では速いですが、長距離では脚に来ます。意外とミドルグレードのバイクが良いんです。高剛性なら必ずしも走るわけでもありません。ちょっと剛性が低いバイクのほうが意外と走るんです。最近で言うなら、GDRのフレームの設計思想は非常に共感出来ます。個人的には、ファンライド時々レースというシチュエーションなら、腰砕け寸前の剛性しかない、柔らかめのバイクが最高だと思っています。

では、僕が脚力や用途別にオススメするならどうでしょう?

最初に結論から示しておきましょう。自分の好きなメーカーの気に入ったものを買えば良いと思います。

例えば、以下のような目安を書くことは可能です。

まず、自分が自転車でやりたい事を考えなければいけません。短距離のレースがしたいのか、長距離のレースがしたいのか。もしくは、ツーリングやブルベといった長距離ライドがしたいのか。

2時間以内の比較的短時間で終わるレースがメインなら、プロの使用しているような高剛性モデルでも大丈夫だと思います。十分に脚はもちます。

長距離のレースを目標とするなら、トップモデルよりも少々剛性の低いモデルが良いでしょう。長距離でも脚が残せる事が重要になってきます。

長距離ライドが目標なら、トップモデルよりも少々剛性の低いモデルか、もっと下のグレードでも良いと思います。

しかし、自分が気に入った機材を使うというのは非常に重要だと思います。好きな機材じゃないと頑張れません。

だから、僕は「オススメの自転車は何?」と聞かれた場合、「予算が許す範囲内で、自分の欲しい奴で一番イイ奴を買いな」と答える事にしています。

確かに「まずは初心者ならSORA組みのアルミバイクが良いよ。乗ってるうちにコンポを105に変えて、そのうちカーボンに載せ替えなよ。パーツのグレードが上がっていく時の精度の上がり方やフレームを変えた時の感動は半端ないよ。」と答える事は出来ますが、これは僕の価値観を押し付けているだけに過ぎません。

自転車が欲しいなら、欲しい自転車を予算が許す範囲内で買えば良いだけの話です。

SORAから順番にコンポのグレードが上がっていく楽しみもあるんですが、最初から良い物を使うメリットもあります。その辺りはお財布との相談ですね。

3 件のコメント:

  1. ライターとして書いた記事が読みたいので教えてくださいwww

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  2. ライターとして書いた記事を早く公開してくださいwww

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  3. >>匿名さん
    検索してみてください。
    当時寄稿していた所がまだネット上に記事を残していれば簡単に見つかるはずです。

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